iOS 9のコンテンツブロッカーについてサイト運営者兼アクセス解析担当が思うこと「長期的に考えたらユーザー満足度は下がるのでは?」

9月16日にリリースされたiOSの最新バージョン「iOS 9」の新機能の中で大きく話題になっているのが「コンテンツブロッカー(広告ブロック)」機能です。

この機能をONにすると、Safariでのウェブサイト閲覧時にGoogleアドセンス等の広告が表示されなくなり、コンテンツが読みやすく、また余計な通信を行わないので軽くなり、ウェブのユーザー体験が向上するといわれています。

この件に関して、「コンテンツの(広告クリックによって)対価を支払わないタダ乗りだ」という意見や、「ブロックされるような広告でなく、もっと見て楽しい広告にすればいいじゃないか」といった意見、「どうせ広告ブロックを入れる人は広告なんかクリックしないし関係ない」といった考え方などがネット上で熱く語られています。

しかし、企業人としてウェブメディアの運営に携わりアクセス解析などを含めたウェブマーケティングに従事している傍ら、個人としてもこのGeeklesというメディアを運営している身として思っていることがあるので、考えの整理も含めて記事を書くことにしました。

コンテンツブロッカーのおさらい

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有料無料いくつも登場してきたコンテンツブロッカーアプリの中で、今回は無料で色々な設定ができる「1Blocker」というアプリを例に、広告のブロックをしてみたいと思います。
インストール後にSafariの設定から1BlockerをONにするだけで設定は完了です。これだけで基本的な広告のブロックが行われます。

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アプリを起動すると詳細な設定を行うことが可能です。
広告のみデフォルトでONになっており、「Trackers」や「Twitter Widgets」などは任意でONにすることができます。1Blockerは課金をしないと、複数のブロックを行うことができません。

広告や解析系のタグだけでなく、任意のURLやCookie、要素も個別で指定してブロックすることができます。

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「Block Ads」「Block Trackers」が具体的にどんなものをブロックしているのかを確認、また個別にブロックのON/OFFを設定することが可能です。

GoogleアドセンスやGoogleアナリティクスといった、どのウェブサイトでも使われているであろうサービスがデフォルトで設定されていました。

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広告ブロックをONにした状態でこのサイトを見ると広告が表示されていたところがぽっかり空いた状態で表示され、見事にGoogleアドセンスがブロックされました(´・ω・`)

“広告ブロック”ではなく、”コンテンツブロック”ということ

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コンテンツブロッカーに関する議論の中で意外と蔑ろにされていることの一つが、コンテンツブロッカーを使えば広告以外のコンテンツもブロックできるという点だと思います。

特にウェブサイト管理者にとって、トラッキング系をブロックされるとツラいものがあります。トラッキング系をブロックされるとアクセス解析が正常に行えないリターゲティング広告が打てなくなるといったことが考えられます。

実際にコンテンツブロッカーアプリによっては、Googleアナリティクスはブロックされてしまうようです。

クリック課金型ディスプレイ広告以外にも大きな影響

「広告ブロックする奴はどうせ広告をクリックしないから関係ない」という考え方もありますが、ウェブ広告はクリック課金型のディスプレイ広告だけではありません。

いきなりクリックという行動をさせることは無理でも、バナーを見せることで認知させ、別の機会にサイトに訪問やバナーのクリックといった成果の発生を考慮した広告出稿の仕方もあります。

ディスプレイ広告以外では、スマートフォンでよく目にするアプリのインストール成果型広告ですが、Cookieをブロックされると計測できなくなり、メディアがアシストしてインストールをさせても、それが成果に計上できません。

また、(契約にもよりますが)記事広告や期間保証型のバナー広告はimp数(広告表示回数)やクリック数を報告することが多いので、本当はたくさん読まれていて、凄く成果を出しているにも関わらずその成果をカウントすることができず過小評価されてしまい、メディアが広告主にネガティブな印象を持たれてしまうことも考えられます。

更にわかりやすい例でいえば、Googleアナリティクスなどのアクセス解析ツールをブロックされてしまうと、当然PV(ページビュー)にカウントすることができなくなるので、媒体の本当の価値がわからなくなります。

モバイルからのアクセスが8割といったウェブメディアも増えてきており、日本ではそのうちの半分以上はiOSなので、コンテンツブロッカーによるアクセス解析ブロックが広まってしまうと厳しいものがありますね。

つまり、広告クリックうんぬんの話は置いておいても、収益に関係する数字にもろに影響を与えるので、やはりウェブメディアにとってコンテンツブロックは非常にネガティブなものだと思います。

長期的な視点で見たらユーザー満足度も下がる

短期的な視点で見れば、「広告無くなった嬉しい、軽い、見やすい」というメリットしか感じられないコンテンツブロッカーですが、私の立場からすると長期的には悪影響じゃないかとも思います。

まず考えやすいのが収益的なマイナスでコンテンツに充てることができる予算が少なくなり、結果としてメディアがつまらなくなるというものです。それだけでなく、アクセス解析をもとにコンテンツの反応を見ることもあるので、「この記事の反応は良かったからこの続編をつくろう」といったような考え方も難しくなってしまうでしょう。

また、アクセス解析(系ツール)をもとにウェブサイトの使いやすさをテストして、ユーザーに使ってもらいやすく改善を行っています。ユーザーがサービスを利用しているのを見て定性的な改善を行う手法もありますが、やはりアクセス解析から得られる定量的な情報もサービスの改善には必須だと私は考えます。

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最後に、コンテンツブロックをブロックするという「FuckAdBlock.js」なるものが登場しているそうなので、こうなってくるといたちごっこです。ウェブメディアがいたちごっこの対応に時間とお金を使うより、コンテンツやサービス自体の改善に時間とお金を使っていった方がユーザー側もメディア側も双方が幸せになれるのではないでしょうか。

まとめ

Appleは私企業ですが、世界的で最も影響力のある企業の一つで、iPhoneをはじめとする製品群は社会的な責任のあるプラットフォームです。iOSを利用するユーザーのウェブ体験を良い物にしたい気持ちもわかります。

しかし、ウェブ体験をする上で重要なコンテンツをウェブに提供しているサイト管理者やブロガーといった権利者のことも少しは考えていただきたいものです。

私も良いコンテンツの提供やサイト表示速度の改善、デザインや要素の配置の改善などでサイトに訪れたユーザーの体験を良いものにしたいと考えています。しかし、企業として営利目的でウェブメディアをやるには広告を配置しなければいけないし、数値的な解析を行わないとなりません。

コンテンツブロッカー機能は誰がなんと言おうと新機能として使われ続けるかと思いますが、使われる皆様においてもこういう考え方もあるのかと、頭の隅っこにでも留めておいていただけると嬉しいです。

gori.me
Qiita
ときまき!

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執筆:あんそく
ラブライバーです。 ラブライブ!に関する記事を書いたり、スマホに関連するサービスについて書いたりしています。

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